休職してしばらくたつと、「このままでいいのだろうか」「ちゃんと仕事に戻れるのだろうか」と不安になることがあります。生活リズムが崩れたり、以前のように動けないことに焦りを感じたりすることもあるかもしれません。

そんなときは、焦って答えを出そうとしなくても大丈夫です。復職に向けた準備は、体調に合わせて少しずつ進めていくことができます。

その選択肢の一つが、生活リズムや働く力を整えながら復職を目指す「リワーク(復職支援)」です。リワークでは実際にどんなことをするのか、そこで取り入れられている認知行動療法(CBT)とはどんなものなのか、そして復職やこれからの働き方を考えるうえでどう役立つのかを、できるだけわかりやすくご紹介します。

リワークでは実際に何をする?

リワークと聞いても、通所して何をするのか思い描きにくいかもしれません。リワークでは、生活リズムを整えながら、仕事を想定した活動や心理プログラム、コミュニケーションの練習などに取り組みます。

当センターでは、決まった時間に通いながら生活リズムを整え、復職に向けた準備を少しずつ進めていきます。午前はその日の体調を確認するウォーミングアップから始まり、曜日ごとに復職セミナー、PC教室、職場のコミュニケーションなどに取り組みます。午後は集団認知行動療法やストレスマネジメント、リラクセーションなどを受けます。復職が近づいた段階では、模擬業務中心のオフィスワークプログラムに切り替えます。

期間は、短いもので数週間、長いものでは年単位に及び、数日で終わるものではなく、数か月かけて段階を追って進んでいくものだと考えておくとよいでしょう。

当センターでは、6か月をひとつの区切りとしてプログラムを組み立てています。はじめの4か月は、認知行動療法などの心理療法と、復職に向けた基礎知識のプログラムを中心に、まず状態を整えることに取り組みます。残りの2か月は模擬業務中心のオフィスワークプログラムに切り替え、仕事に必要な集中力や持続力を取り戻しながら、業務上のやりとりに少しずつ慣らしていきます。

実際にどのくらいの期間になるかは、お勤め先の制度で決められた復職の期限や、そのときの状態によって変わり、おおむね3か月から7か月の範囲で調整しています。初回相談の際に、現在の状態をお聞きしたうえで見通しをお伝えします。

リワークの中身は実施する施設や機関によってかなり様々です。医療機関が行う場合もあれば、公的機関や職場が主体となって行う場合もあり、目的や進め方もそれぞれ異なります。当センターは、障害福祉サービスの「自立訓練(生活訓練)」として支援を提供する、いわゆる福祉リワークにあたります。

リワークでは、復職に向けた準備の一つとして心理療法を取り入れることがあります。心理療法にはさまざまな方法があり、その一つが、当センターでも取り入れている「認知行動療法(CBT)」です。

認知行動療法(CBT)とは?

認知行動療法では、日常生活の中で起きた出来事に対して、「どんな考えが浮かんだか」「どんな気持ちや身体の反応があったか」「その結果どんな行動をとったか」を整理していきます。

たとえば昼過ぎに目が覚めたとき、「もうこんな時間だ。自分は本当に駄目だ」と考えると、気持ちが沈み、そのまま何もせず一日を過ごしてしまうことがあります。そこで、その考えだけを事実と決めつけず、「昨夜は眠れなかった」「午後からできることもある」といった別の情報にも目を向けます。そして、着替える、少し外に出るなど、実際に別の行動を試し、その後の気分や状況がどう変わるかを確かめていきます。

認知行動療法は、単に「前向きに考える」ためのものではありません。出来事と認知、感情、身体反応、行動のつながりを整理し、考え方の幅を広げたり、これまでとは違う行動を試したりしながら、自分に合った対処法を身につけていく心理療法です。気分が落ち込んでいるときは、物事を多面的に見ることが難しくなり、考え方が一時的に偏りやすくなるといわれています。これは性格そのものの欠陥ではなく、誰にでも起こりうる一時的な思考のクセです。

実際のカウンセリングでも、ただ「考え方を変えましょう」と伝えるわけではありません。今困っていることを一緒に整理し、「今週はこれを試してみる」と取り組めそうな課題を決め、次の面談で振り返る。そうした小さな試行錯誤を重ねていきます。

「自分の性格は変えられない」という悩みに認知行動療法でできること

リワークでは、休職に至った経緯を振り返る時間があります。そのなかで、たとえば「取引先からの指摘を『自分が全否定された』と受け止めて、強く落ち込んでしまった」といった場面が出てくることがあります。そして、「自分の性格はもう変えられない」と感じている方も少なくありません。

認知行動療法では、性格を変えようとするのではなく、そのときに浮かんだ考えや気持ち、行動を整理します。「本当にすべてを否定されたのか」「別の受け止め方はないか」と考え方の幅を広げ、必要に応じて相手に内容を確認するなど、別の行動も試していきます。

マルチタスクで焦りやすい場合には、タスクを分けたり優先順位をつけたりしながら、自分に合った対処法を探します。

こうした練習を重ねることで、自分がどんな場面でつまずきやすく、どう対処するとよいのかが少しずつ見えてきます。

自己理解はこの先も役に立つ

一人で休職期間を過ごしていると、「自分は仕事に向いていないのでは」と考えが行き詰まってしまうこともあります。カウンセリングで自分の経験を振り返ったり、座談会やグループディスカッションでほかの人の考え方を聞いたりすることで、「自分はこういう場面で無理をしやすかったんだ」と少し離れたところから自分を見られるようになることがあります。自分の考え方のクセや対人関係での反応のパターンに気づいていく過程そのものが、再発予防を考えるうえでの手がかりにもなります。

相談に「早すぎる」も「遅すぎる」もありません

「休職してまだ間もないのに、復職の相談をするのは早いのではないか」「休職してからずいぶん時間が経ってしまった。ここまで来たら、もう手遅れではないか」。そんなふうに感じて、連絡をためらってしまうことがあります。

復職の準備は、復職直前だけにするものではありません。厚生労働省の手引きでも、休職中から少しずつ準備を始め、復職後まで段階的に支援していく考え方が示されています。相談や準備は、休業のどの段階からでも始められるものとして位置づけられているのです。「まだ早い」も「もう手遅れ」も、実際にはあまり当てはまらない考え方だといえます。

当センターでは、うつ病、双極症(双極性障害)、適応反応症(適応障害)、神経発達症(発達障害)などを抱える方はもちろん、「仕事が続かない」「朝起きられない」といった日常生活のお悩みをお持ちの方も対象にご相談をお受けしています。主治医とのあいだで復職の話がまだ具体的になっていない段階でも、まずはお気軽にご相談いただけます。

経済的な負担や、相談すること自体への心理的なハードルもあるかもしれません。当センターでは初回カウンセリングを無料でご案内しており、対面での公認心理師によるカウンセリングのみのご利用も可能です。復職するかどうか、まだ答えが出ていなくても構いません。まずは今の状態や悩みを整理するところから、一緒に始めてみませんか。

引用元・参考文献

  1. リワークプログラムとは|日本うつ病リワーク協会
    https://utsu-rework.org/rework/
  2. 改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き|厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構
    https://www.mhlw.go.jp/content/000561013.pdf
  3. うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)|厚生労働科学研究費補助金 こころの健康科学研究事業
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf
  4. 認知療法とは|日本認知療法・認知行動療法学会
    https://jact.jp/introduction/
  5. リワーク支援|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(大阪障害者職業センター)
    https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/osaka/27_osaka_returntowork.html
  6. 障がい福祉サービスの利用について|大阪市
    https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000613049.html